大津の派遣看護師

看護実習の指導教官のエピソード

私が実習で当たった指導教官は本当に尊敬できる人ばかりでした。
病院側も学生を酷く扱うと、その学校からの就職人数が減ることが
わかっているからかもしれませんが。
個人的には指導者に選ばれるのは教育に興味を持つ、意識の高い看護師が多かったようにも思います。

 

中でも特に記憶に残る看護師さんがいました。Aさんとします。
指導教官としては若めで20代後半でした。
病棟の中で他の看護師から絶大な支持があり、
Aさんが頼めば、他の看護師も積極的に学生のケアに付き合ってくれました。

 

非常に小柄なのに元気でテキパキとしていて、普段ははっきりした明るい物言いなのですが
時には厳しく的確に学生を指導する、看護師のお手本のような方でした。
慢性期の、特に末期の癌患者が多い病棟だったのですが、
患者さんの前でのA看護師は20代と思えぬ程に包容力があって
優しく、暖かい雰囲気でした。
患者さんの話を聞きながら共に涙を流す場面も何度も見ました。

 

実習最終日、そのA看護師に最後に何か質問はない?と言われた時、
「どうしてAさんは看護師になったんですか?」と学生の一人が訊きました。

 

A看護師は「お金!お金がいいからに決まっているでしょ!」と笑い、
バシバシと学生の腕を叩きながら
「看護師はね、女優なの!女優よ!」と言い放ち、
小柄な身体を翻すと廊下を跳ねるようにしてナースステーションへ歩き去ってしまいました。

 

私達はあっけに取られ、顔を見合わせて笑ってしまいました。
普段の様子からA看護師が照れ隠しで言ったことはわかります。

 

しかし、一番純粋な学生時代、看護師は患者さんに尽くさねばと常日頃から
きつく教わり、時にそうなりきれない自分はダメなのではないか、
献身さが足りないのではないか、と自問自答することもある中で、
A看護師のあっけらかんとした発言にふっと緊張がほぐれた気がしたのです。
それは他の学生も同じであったようで、今でも同期が集まると
A看護師の話が出ることがあります。
看護師となった今、一緒に働いてみたいなあと思うような方でした。